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大野クリニック 目からウロコの漢方➂〜二日酔いと漢方治療〜

[2018.11.10]

第3回 二日酔い(頭痛・吐き気・食欲不振・下痢)と漢方

"忘年会、飲んで、騒いで、二日酔い"

  30歳代男性。営業職で飛び回り接待つづきの毎日を過ごしている。もともと酒は好きだがあまり強くなく、特に忘年会シーズンで毎日のように飲酒の機会があると、二日酔いのまままた飲酒で三日酔い、四日酔いになってしまう。年の暮れも押しつまって、今回も飲酒の機会が増え、頭痛、吐き気、食欲不振、下痢が続いて当院を訪れました。

 頭痛に加えて吐き気のために表情がゆがんでいます。下痢はしていますが腹痛はない。顔は浮腫んでいるが尿が思うようにでない。頭痛のために痛み止めを買い求めて服用したが、余計に気持ちが悪くなった。舌の辺縁は歯の跡がつき歯痕舌、滑脈も触知、胃のあたりを震わせるとぽちゃぽちゃとした水の音(心下振水音)がします。水分が体内に貯留(水毒)してしまったようです。

 二日酔いは西洋医学的には脱水素酵素(アルコールを分解する酵素)の不足であり、等張性脱水です。西洋医学的治療は本質的には点滴以外の適切は治療方法を持ち合わせていません。漢方医学では二日酔いは水毒ですから、水毒を治療する利水剤を使用します。この代表が五苓散で、水毒による頭痛、吐き気、食欲不振、下痢は五苓散1剤で解決します。

 この方は吐き気が強く、五苓散を服用できそうも無いため、先ずは脱水を防ぎ、漢方薬が服用できるように補液剤に制吐剤(吐き気止め)を入れて点滴としました。少し気分が改善したので、五苓散を持って帰しました。今度からは深酒をする前にこの五苓散を服用するようにと指示しました。次の年、今度は新年会です。五苓散が効いたのでまた欲しいと来院。飲む前の五苓散が役立ったようです。

 五苓散は傷寒論・金匱要略が原典です。茯苓・猪苓・朮・沢瀉と利水(体に溜まった水を捌く)効果をもつ生薬に桂皮が加わった生薬構成です。水毒に対する代表的漢方薬です。水毒とは体の中の水分代謝が悪くなって溜まってしまう状況をいいますが、脱水もまた水毒と捉えることができます。
このあたりは現代医学的にすでに十分に研究されていて、細胞の表面にあるアクアポリンという物質に作用して体液の出入りをコントロールしていることが明らかとなっています。日常的に頻繁に使われる処方で、二日酔いばかりでなく、低気圧で悪化する頭痛・めまい、小児の発熱、嘔吐にも役立ち、解熱剤が不要となります。また、熱中症の予防にも役立ち、心臓、腎臓の軽度の異常にも効果的で安心して使える漢方薬です。

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