尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
尋常性乾癬は、免疫の異常によって引き起こされる慢性炎症性皮膚疾患です。 皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が異常に早くなり、 赤く盛り上がった発疹と白い鱗屑(フケのような皮むけ)が生じます。
感染症ではなく他人にうつる病気ではありませんが、 慢性的に再燃と寛解を繰り返す特徴があります。
尋常性乾癬の主な症状
- 赤く盛り上がった発疹(紅斑)
- 銀白色のフケ状の鱗屑
- かゆみ(個人差あり)
- 頭皮・肘・膝・腰・臀部に多い
症状が進行すると、爪の変形(爪乾癬)や、 関節に炎症を起こす乾癬性関節炎を合併することもあります。
原因と発症の背景
乾癬の原因は完全には解明されていませんが、 免疫系(T細胞)と炎症性サイトカインの異常が関与しています。
- 遺伝的要因
- ストレス
- 感染症
- 肥満・喫煙・飲酒
- 外傷(ケブネル現象)
尋常性乾癬の治療方針
治療は重症度・病変の範囲・生活への影響を考慮して選択します。 段階的治療が基本です。
① 外用療法(軽症〜中等症)
最も基本となる治療です。
乾癬治療で使用される主な外用薬
外用薬は、軽症〜中等症の尋常性乾癬における基本治療です。 内服薬や注射薬を使用する場合でも、多くのケースで併用されます。
● ステロイド外用薬
炎症を強力に抑え、赤み・盛り上がり・かゆみを改善します。 症状や部位に応じて強さ(ランク)を調整して使用します。
- デルモベート®(クロベタゾールプロピオン酸エステル)
- アンテベート®(ベタメタゾン酪酸プロピオン酸エステル)
- リンデロンDP®(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)
短期間で効果が出やすい反面、長期連用では皮膚萎縮などの副作用に注意が必要です。
● ビタミンD3外用薬
皮膚の過剰な角化を抑え、乾癬の病変を改善します。 長期使用が可能で、維持療法にも適しています。
- ドボネックス®(カルシポトリオール)
- マキサカルシトール軟膏(オキサロール®)
● ステロイド+ビタミンD3配合外用薬
現在の乾癬治療で最も使用頻度の高い外用薬です。 炎症と角化の両方を抑制でき、使用回数を減らしやすいのが特徴です。
- ドボベット®(カルシポトリオール+ベタメタゾン)
- マーデュオックス®(カルシポトリオール+ベタメタゾン)
外用薬は「塗り方」「塗る量」「継続」が治療効果を大きく左右します。 当院では、患者さんごとに具体的な使用方法を丁寧に説明しています。
② 内服薬治療
● オテズラ錠(アプレミラスト)
オテズラは、PDE4阻害薬と呼ばれる内服薬で、 免疫反応を穏やかに調整する作用があります。
- 注射が不要(内服)
- 比較的安全性が高い
- 中等症以上で外用薬が不十分な場合に適応
副作用として、下痢・悪心・体重減少などがみられることがあります。
生物学的製剤による乾癬治療
生物学的製剤は、中等症〜重症の尋常性乾癬に対して使用される 注射製剤です。乾癬の原因となる炎症性サイトカインを標的として抑制します。
● TNFα阻害薬
- ヒュミラ®(アダリムマブ)
- レミケード®(インフリキシマブ)
- エンブレル®(エタネルセプト)
炎症全体を抑える作用があり、関節症状を伴う場合にも使用されます。
● IL-17阻害薬
- コセンティクス®(セクキヌマブ)
- トルツ®(イキセキズマブ)
- ルミセフ®(ブロダルマブ)
皮疹改善効果が非常に高く、近年主流となっている治療薬です。
● IL-23阻害薬
- トレムフィア®(グセルクマブ)
- スキリージ®(リサンキズマブ)
- イルミア®(チルドラキズマブ)
再発抑制効果が高く、投与間隔が長い点が特徴です。
生物学的製剤使用時の安全管理
生物学的製剤は高い治療効果が期待できる一方で、 結核や肺感染症などの感染症リスク管理が重要です。
当院では、生物学的製剤導入前および治療中に 血液検査、胸部レントゲン、必要に応じて胸部CTを行い、 安全性を重視したフォロー体制を整える必要があります。
