百日咳
百日咳(百日咳菌感染症)について
百日咳は「ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)」という細菌によって引き起こされる急性呼吸器感染症です。小児期に多く見られる疾患でしたが、現在では成人の感染例が増加しており、特に咳が長引く成人での見逃しが問題となっています。
百日咳の症状
感染初期は風邪と見分けがつきにくく、進行することで特有の「連続的な咳発作」「笛のような吸気音」が現れます。
- 初期(カタル期:1〜2週):軽い咳、鼻水、微熱
- 痙咳期(2〜4週):連続的で止まらない咳発作、嘔吐や息苦しさを伴うことも
- 回復期(3週以降〜):症状は改善するが、咳だけが数週間以上持続
当院での百日咳の診断体制
当院では、以下のような迅速かつ的確な診断が可能です。
- 迅速多項目PCR検査(20分で結果):百日咳菌、パラ百日咳菌を含む呼吸器病原体を即時同定
- 胸部レントゲン:肺炎や気管支炎との鑑別
- 胸部CT検査:咳が長引く方、異常陰影を伴う場合に精密評価が可能
パラ百日咳について
「パラ百日咳(Bordetella parapertussis)」も同様の症状を呈しますが、一般的に軽症です。ワクチンの効果が限定的であり、PCR検査での区別が重要です。
百日咳とパラ百日咳の比較表
項目 | 百日咳 | パラ百日咳 |
---|---|---|
原因菌 | B. pertussis | B. parapertussis |
感染力 | 非常に強い | やや弱い |
咳の特徴 | 発作性咳嗽、笛様の吸気音 | やや軽症で咳の程度も軽い |
ワクチン効果 | 有効 | 限定的 |
PCR検査 | 陽性で確定可能 | 陽性で区別可能 |
治療について
治療は主にマクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が使用されます。早期治療により症状の進行を抑え、周囲への感染を防ぐことができます。
ワクチンと予防
- DPT(三種混合ワクチン):乳児期に4回+就学前に1回の計5回接種が定期
- 成人の免疫低下:成人では免疫が低下しており、ワクチン未接種世代(高校生〜40代)の感染が増加
- 再感染予防:任意でのワクチン再接種が推奨されることもあります
百日咳が疑われる方へ
咳が2週間以上続く方、夜間や明け方に激しく咳き込む方は百日咳の可能性があります。PCR検査等が実施できる専門の医療機関の受診をおすすめします。