混合性結合組織病(MCTD)
混合性結合組織病(MCTD)は、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、関節リウマチなど、複数の膠原病の特徴が重なり合って現れる疾患です。自己免疫疾患の一つであり、自己抗体によって自らの組織が攻撃されることで、さまざまな臓器や組織に炎症や障害が起こります。MCTDは1972年にSharpらによって提唱され、抗U1-RNP抗体の陽性が特徴とされます。
1. 混合性結合組織病の症状
MCTDの症状は多岐にわたり、以下のようなものが見られます。
- レイノー現象(寒冷刺激で指が白くなる)
- 関節痛や腫れ
- 筋力低下や筋肉痛
- 指の腫れ(ソーセージ様)
- 皮膚硬化、発疹
- 息切れ、呼吸困難(肺高血圧・間質性肺炎)
初期症状が軽微なことも多く、発見が遅れることがあります。早期診断と経過観察が重要です。
2. 混合性結合組織病の診断
診断には、抗U1-RNP抗体の高値が重要な手がかりとなります。以下のような検査を組み合わせて行います。
- 血液検査:抗U1-RNP抗体、ANA、炎症反応(CRP、ESR)
- 筋酵素:CK、AST、LDH など(筋炎の評価)
- 筋電図:筋炎の有無を評価
- 画像検査:胸部レントゲン、CT(肺病変の有無)、心エコー(肺高血圧の評価)
- 皮膚・関節の超音波検査:関節炎、滑膜炎の確認
他の膠原病との鑑別診断も必要なため、膠原病専門医による総合的な診断が求められます。
3. 混合性結合組織病の治療
治療は、症状や臓器障害の程度によって異なります。主な治療は以下のとおりです。
- ステロイド薬(プレドニゾロンなど):炎症の抑制に有効
- 免疫抑制剤:アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムスなど
- 抗リウマチ薬:メトトレキサート(関節症状が主体の場合)
- 肺高血圧治療薬:ボセンタン、シルデナフィル など
寛解導入後も定期的なフォローアップが必要です。感染症リスクにも注意が必要なため、予防接種や感染対策の相談が重要です。
4. 合併症と注意点
MCTDは、以下のような合併症を生じることがあります。
- 肺高血圧症:血圧上昇による息切れ、右心不全
- 間質性肺炎:進行性の呼吸苦、咳
- 心膜炎・胸膜炎:胸痛、息切れ
- 腎障害:蛋白尿、浮腫
これらの重篤な合併症を早期に発見するために、定期的な胸部CT、心エコー、呼吸機能検査などが推奨されます。
混合性結合組織病Q&A
- Q. MCTDはどのような病気ですか?
- A. MCTDは、SLE、強皮症、多発性筋炎などの自己免疫疾患の症状が重なって現れる病気で、抗U1-RNP抗体の陽性が特徴です。
- Q. MCTDは誰に多い病気ですか?
- A. 20~50歳代の女性に多くみられますが、男女問わず発症します。
- Q. MCTDの初期症状にはどのようなものがありますか?
- A. レイノー現象や指の腫れ、関節痛、筋肉痛などがみられます。
- Q. MCTDは治りますか?
- A. 完治は難しいですが、治療により寛解状態(症状が安定し生活に支障がない状態)を目指します。
- Q. ステロイド薬はいつまで飲む必要がありますか?
- A. 症状の安定とともに徐々に減量しますが、長期的な服用が必要な場合もあります。医師の指導に従うことが重要です。
- Q. 抗U1-RNP抗体が陽性ならMCTDと診断されますか?
- A. 抗体が陽性でも症状がなければMCTDと診断されないこともあります。全身症状との組み合わせで診断します。
- Q. MCTDの合併症にはどんなものがありますか?
- A. 肺高血圧、間質性肺炎、心膜炎、腎障害などが知られています。
- Q. 日常生活で気をつけることは?
- A. 冷えの予防、感染対策、過労を避ける、定期的な通院・検査が重要です。
- Q. 妊娠は可能ですか?
- A. 症状が安定していれば妊娠は可能ですが、事前の計画と医師との相談が必要です。
- Q. どの診療科を受診すればよいですか?
- A. 膠原病内科やリウマチ科など、自己免疫疾患に詳しい医師のいる医療機関が望ましいです。