アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹を中心とする慢性的な疾患です。
原因は、はっきりしていませんが、遺伝的にアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)に、環境的な要因が加わり発症すると考えられています。
患者さんの多くに皮膚の乾燥、皮膚のバリア機能の低下がみられ、花粉症やハウスダスト(ダニ)によるアレルギー性鼻炎、喘息を経験されている方が多数です。
アトピー性皮膚炎は、寛解と増悪を繰返すことが特徴です。治療は、まずは薬物による治療が基本となります。
外用薬(塗り薬)
ステロイド外用薬
免疫反応を抑制するために使用します。比較的軽微な皮膚状態に使用されるものから重症に使用されるものまで、細かく分類されています。『ステロイドは怖い』『ステロイドはあまり使わない方が良い』という認識をお持ちの患者さんが多くいらっしゃいますが、専門の医師の処方に基づいて適切な量・時期・部位に使用する事が重要です。
免疫抑制外用薬(プロトピック®軟膏)
ステロイドと同様に免疫反応を抑制する働きがあります。ステロイド外用薬を長期間使い続けることによる副作用を考慮する場合や、ステロイド外用薬で効果不十分な場合や炎症が落ち着いている場合などに使用されます(タクロリムス ※プロトピック®軟膏)
JAK阻害剤外用薬(デルゴシチニブ ※商品名コレクチム®軟膏)
2020年に新たに保険適用承認を受けた外用薬です。ステロイド製剤以外では、プロトピック®軟膏以来の外用薬といえます。細胞内の免疫伝達に係るヤヌスキナーゼ(JAK)の働きを阻害することによって、免疫反応を抑制します。
保湿剤
皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎の治療にとって弊害となります。保湿剤で皮膚に潤いを保つことは、アトピー性皮膚炎の治療においてもとても重要で す。上記の外用薬と混合して使用したり、単剤で使用します。保険適用な保湿剤も様々あり、ローションタイプ、クリーム、軟膏などがあり、保湿効果や使用感が様々です。
内服薬(飲み薬)
抗ヒスタミン内服薬、抗アレルギー内服薬
アトピー性皮膚炎の治療では、皮膚バリアの低下を防ぐため、皮膚をかいて傷つけないことが非常に重要です。予防的な意味合いでも内服薬でかゆみを抑えるために、内服薬も有用な一つです。
免疫抑制内服薬
16歳以上の患者さんに限定されています。強い炎症を伴う湿疹が広範囲にある、他の治療で十分な効果が得られない場合、腎機能に障害がない、などの条件があります。
注射剤(商品名:デュピクセント)
2018年に新たに保険適用承認を得た治療薬です。アトピー性皮膚炎の炎症を引き起こすとされる『IL-4』『IL-13』という物質(サイトカイン)の働きを抑制する新しいタイプの治療薬です。今までの治療法で十分な効果が得られない成人アトピー性皮膚炎の方が対象となります。また、この注射剤で治療するときにも、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬を併用します。安全性のエビデンスも集まり、非常に高い効果があるとされていますが、その分非常に高価な薬剤です。
光線治療器(エキシマライト)
エキシマライトは紫外線の免疫調整作用を利用した治療法です。さまざまな皮膚疾患の症状改善が期待できる、保険診療上も認められた治療法です。紫外線にはUVA、UVB、UVCの三種類がありますが、中でも波長が短く肌の浅いところに届くUVBのうち、より治療効果の高い308nm(ナノメートル)の紫外線を発生させる治療器を用います。ステロイド外用薬のみでは改善しないアトピー性皮膚炎や乾癬、円形脱毛症などの症状改善が期待できます。
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